近年、盛り上がりを見せるeスポーツ。ゲーム業界は分業が進んでおり、ゲームタイトルから調べると、どこへ投資すればよいのか迷いませんか?
しかし、資本の流れを上流へ遡ると一つの企業に企業に行き着くはずです
ゲーム業界の有力企業のすべてに投資していると言っても過言ではないテンセントについて、投資家目線で解説します
目次
長期的で上昇を続ける優良株
騰訊(Tencent Holdings Ltd.:テンセント)
HKEX: 700
【外部リンク】公式WEBサイト
HKEX(香港交易所)
Hong Kong Exchanges and Clearingの略語で、日本語では香港証券取引。主な指数として主要50銘柄から算出される浮動株時価総額加重平均指数「香港ハンセン指数(Hang Seng Index)」があります
テンセントの株価チャート
- 時価総額: 3.882兆香港ドル(約54兆円)2020年4月時点
- 昨年度売上は、377,289百万人民元(約5.7兆円)前年度比21%増加
- 1株あたり純利益(EPS)は、9.966人民元(約151円)
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※ブログ記載内容は、投資の推奨または勧誘を目的としたものではありません。※正確な情報をお伝えるるよう心がけていますが、記載内容を当ブログが保証するものではありません、取引の際は、必ずご自身で取引内容を確認し、投資にあたっての最終判断はご自身でお願いします
価格変動とその理由
2013年5月からの上昇
WeChat Payの爆発的な普及への期待から、株価が上昇
2012年に設立された中国国内のタクシー配車サービスアプリを運営する企業 Didi Chuxing Inc.(株式未公開)へ2013年に1500万ドルを出資。翌年2014年に3000万ドル出資
出資の目的は、配車アプリDidiの決済にテンセントの決済サービスWeChat Payを使うことで、WeChat Payを一気に普及させるのが目的の出資と言われています
Didiは出資金を運転手へのインセンティブに充て、Didiを使用するタクシー利用者の支払いを超低価格におさえます。それが、配車アプリの急激な普及を促し、数カ月で2億人を超えるユーザーを獲得
2020年現在は8億人を超える利用者を獲得しています
2018年3月22日の急落
筆頭株主のNASPERS(ナスパーズ/南アフリカ)が上場前2001年5月の出資以降、初となる持株の売却をおこないました
売却はテンセント株の2%にあたる額は769億香港ドル(約1兆円)。ナスパーズの持ち出資比率は31.17%に低下
このこと知られると、株価は窓を開けて大きく下落。前日の高値475.6香港ドルから、2018年10月30日の安値251.4香港ドルまで、約-53%の暴落のきっかけとなりました
中国政府がゲーム営業許可審査を凍結
複数のメディアで、営業許可凍結がテンセントの株価下落に大きく影響したと記事にしています。そこで、この凍結に関する報道日・内容と株価の関連性について確認しました
結果的に、凍結に関連した報道発表日の値動きは、長期の下落幅からするとごく軽微なものです。このことから、凍結と株価の長期下落について因果関係を明確に語ることは困難と判断しました
2018年3月のナスパーズ持株売却は下落と報道日が一致しており、明らかに下落の起点になっています。そして、そこからの下落は2018年11月頃まで継続します。
この9か月にわたる下落が、持ち株売却だけが理由とは考え難いのではないでしょうか。だとすると、下落が長期化した要因は、持株売却と営業許可凍結の両方にあると考えられるかもしれません。
2018年8月13日
この日、テンセントが運営するゲーム配信プラットフォームWeGameで同月8日から販売が開始された人気シリーズ最新作『モンスターハンター:ワールド』の販売が突然停止されます。販売ページには、販売停止の理由として「ゲームの内容が中国政府の定めた政策や法律の要求を完全に満たしていないため」旨が掲示されました
発表の2日後に下落が始まっているため、因果関係があると明言できませんが、同時期に株価は大きく下落しています。
同月9日終値372.6香港ドルから同月15日終値336.0香港ドルまで、4日連続で前日割れとなっています。9日から15日までの騰落率は-9.8%
2018年8月15日
「中国当局がオンラインゲームの営業許可審査の凍結」と、Bloombergが報道。15日の終値336.0香港ドル、翌16日の終値325.8香港ドルへ。騰落率-3%
2018年12月21日
2018年中国ゲーム産業年次総会で、中国政府の関係者が「認可が再開されている」旨の発言をおこないます。この発言により、テンセントの株価は前日終値301.6から当日終値315.2へ。騰落率+4.5%
2018年12月29日
中国政府がゲーム営業許可審査を凍結を解除。80タイトルの営業が許可される。しかし、テンセントのゲームはリストに含まれませんでした。株価への影響はほとんど見られません
ミッションは「インターネットユーザーの生活を豊かにする」
テンセントは、1998年に中国の深圳市で馬化騰(ポニー・マー)さんが設立。
インターネット付加価値サービスの提供企業で、企業のミッションはインターネットユーザーの生活を豊かにすること
2004年、香港証券取引所に上場。売出価格は1株3.7香港ドル。4億2020万株を売出し、市場から15億5000万香港ドル(約215億円)調達。2009年、香港ハンセン指数の構成銘柄に選ばれました
また、テンセントの特徴の一つとして、M&Aを強力に推進している点があげられます。約600社の企業に投資し、国内外での存在力が高まっています。
時価総額は世界のインターネット企業3位
下のリストは2020年3月時点の世界の企業時価総額ランキングです
- サウジアラムコ(TADAWUL: 2222)
- マイクロソフト(NASDAQ: MSFT)
- アップル(NASDAQ: AAPL)
- アマゾン・ドット・コム(NASDAQ: AMZN)
- アルファベット(NASDAK: GOOGL)
- アリババ・グループ・ホールディング(NYSE: BABA)
- フェイスブック(NASDAQ: FB)
- テンセント・ホールディングス(HKEX: 700)
世界のインターネット企業で3位。主な収益がゲーム関連の企業としては、世界でトップです
中国国内の特殊なインターネット環境
中国国内は政府による情報統制のため、国外とのインターネット通信が規制されます。
世界シェア上位のインターネットサービス、Facebook・Twitter・Googleは中国国内では基本的に使用できません。
このように特異な環境にあるため、中国国内では世界の潮流とはことなる、独自の環境が形成されています。
そして中国国内のインターネットサービスのトップランナーが、テンセントです。
前年比21%の伸びを記録する理由
2019年度は、Weixinの躍進が主な効果で広告収益が増加。オンライン広告収入は前年比19%増の202億2,500万人民元、ソーシャルおよびその他の広告収益は37%増加し、16,274百万人民元となっています。
Tencent Videoの2019年サブスクリプション契約が前年比12%増とこちらも順調に契約数を伸ばしています。
また、Weixin Payを中心としたモバイル決済サービスのフィンテック(FinTech)およびビジネスサービスの躍進が近年は目立ちます。2019年収益が前年度比39%増加して29,920百万人民元となっています。
中国のインターネット普及率は、まだ61.2%
2019年8月に発表された China Internet Network Information Center の2019年統計によると、中国国内のインターネット利用率は61.2%。利用者にすると約8.5億人
同時期に日本の総務省が発表した国内普及率は79.8%。
単純に比較するなら、まだ18.6%の伸びしろがあります。これを人口に当てはめると約2.6億人。日本の人口が1.2億人ほどのなで、その2倍以上の需要があるということになります。
このことから、まだまだインターネット利用者数は増加していくと考えられ、中国国内インターネットサービスのシェアが大きいテンセントには成長の可能性が残されていると言えそうです。
提供する主なサービス
SNS
- Weixin(ウェイシン)
2011年から提供される、中国国内用メッセンジャーアプリ。スマートフォンに必ず入っていると言われるほど国内で普及している、中国版LINE。チャット以外にも、決済・送金、公共サービスなど多機能で、生活に必要な機能を網羅する - WeChat(ウィーチャット)
Weixinの中国国外版 - WeChat Work(ウィーチャット・ワーク)
ビジネス用WeChat - QQ(キューキュー)
1999年から提供される、PCからスタートしたコミュニケーションアプリ。Weixinより多機能。スマートフォン普及に伴い、Weixinへユーザーが移行した - Tencent Meeting(腾讯会议:テンセント・ミーティング)
- Tencent Video(テンセント・ビデオ)
ドラマ・アニメ・バラエティ番組などのほかに音楽ストリーミングと多くを網羅する - WeShow
eスポーツ関連の有力企業株式の過半数取得
世界のeスポーツ市場の収益は、オランダのゲーム市場分析会社Newzooによると2020年に10億5,930万ドルに、2023年には15億5,820万ドルと予測しています。
そして、その中心となる多くの企業の株式をテンセントが保有しています。以下は主な企業とその保有比率のリストです
- ライアットゲームズ(Riot Games/米国)
リーグ・オブ・レジェンドが代表作。全株式を保有 - スーパーセル(Supercell/フィンランド)
クラッシュ・オブ・クラン、ヘイ・デイが代表作。株式の51%を保有 - エピックゲームズ(Epic Games/米国)
フォートナイトが代表作。株式の48%を保有 - アクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard/米国)
オーバーウォッチ、コール オブ デューティ、キャンディクラッシュ、などが代表作。株式の5%を保有 - ユービーアイソフト(Ubisoft/フランス)
アサシン クリード、ゴーストリコン、ディビジョンなどのフランチャイズが代表作。株式の5%を保有
eスポーツとは
おもにPCの対戦ゲームで競う競技をeスポーツと呼びます
大会で採用される代表的なゲームタートルは、テンセントが全株式を保有する会社のゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』と、48%保有する会社のゲーム『フォートナイト』
ゲームタイトル毎の世界大会が数多く開催されており、規模が年々拡大しています
賞金
とくに賞金額は高騰が目覚ましく、2019年におこなわれたフォートナイト世界大会では優勝賞金が300万米ドル(約3億円)になり世界中でニュースになりました。
子会社の米国市場への上場ラッシュ
- Bilibili(NASDAQ: BILI)
動画共有サイト - Huya(NYSE: HUYA)
ライブ配信サービス - Pinduoduo(NASDAQ: PDD)
ソーシャルEC - NIO(NYSE: NIO)
電気自動車メーカー - Qutoutiao(NASDAQ: QTT)
ニュースアプリ - Tencent Music Entertainment(NYSE: TME)
音楽配信サービス
音楽配信サービス子会社の時価総額はSpotifyと同水準
中国最大手の音楽配信サービス(Tencent Music Entertainment:テンセント・ミュージック・エンターテイメント/NYSE: TME)が2018年12月12日にニューヨーク証券取引所に上場しました。
仮条件$13~$15ドル、公募価格は13米ドル。時価総額は競合のSpotifyと同水準の230億ドル(約2兆6100億円)です
IPO主幹事は、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ、ドイツ銀行、ゴールドマン・サックス・グループ、JPモルガン・チェース、モルガン・スタンレーなど
サービスにはQQ音楽、Kugou、Kuwo、We Singなどがあります
みのたけの感想
テンセントはすでに株価が高値水準にあるというアナリストの意見を見かけます。たしかに上昇余地は少ないかもしれませんが、中国の状況や世界の動向をかんがえると、少なからず上昇する可能性は高そうに感じます。
また、中国政府の動向に株価が左右されるという、不安要素もあります。記事を書くにあたって中国政府の発表についていくつも調べましたが、結果だけの発表で意図がわからない事が多くありました。認可凍結についても猶予がなく突然の発表だったようです。
しかし、それらを考慮しても魅力的な銘柄なのではないでしょうか。
下値を結んだトレンドラインから考えると、記事執筆時点での株価は417.2とやや高値水準です。「みのたけ」は360前後まで下がればぜひ買いたいと思います。
ご愛読ありがとうございます!