ケロッグから発売されているの植物由来肉「インコグミート」
遺伝子組み換えではない大豆を主体に、調味料もすべて植物由来の、100%ビーガン対応食品です。
前半で巨大企業ケロッグはどんな起業か、後半で植物由来肉について解説します。
目次
ケロッグは100年以上続く名門企業
「食品やブランドを通じて、世界を豊かで楽しいものにする」ことをめざし、そのために必要なことを実践しています。
日本ではシリアルの「コーンフレーク」以外に、ポテトチップスの「プリングルス(Pringles)」や、シリアルの「オールブラン(ALL-BRAN)」が特に有名なブランドとしてあげられます。
100年以上前の1906年、ウィル・キース・ケロッグ(Will Keith Kellogg)さんがコーンフレークを製造販売するために設立した企業です。本社は米国ミシガン州にあります。
設立当初は社名がバトルクリーク・トーステッド・コーンフレークカンパニーでしたが、1922年に現在のケロッグカンパニーに変更されました。
株価は、長期でみると右肩上がり
Kellogg Company (ケロッグ)NYSE: K
1兆5千億円を売り上げる巨大企業
2019年の営業利益は約1兆5千億円(Kellogg's Financial News Release より)。
シリアルの世界トップシェアを独走しています。
シリアルの競合企業にはネスレやゼネラル・ミルズが、競合商品としてはスナックバーがあげられます。
朝食シリアル市場は2023年に7兆5千億円規模と予測される
市場調査会社 Packaged Facts は、世界の朝食用シリアル市場は年に3%拡大しており、2023年には約7兆5千億円規模になると予測しています。
同調査の2020年市場規模は約6兆8千億円。
需要拡大を予測する根拠は、現在の市場の中心は先進国市場だが、アジア・アフリカ・中東などの国々で食習慣の欧米化による今後の需要拡大が想定され、成長余地が十分にあることです。
なお、朝食用シリアル市場には、コーンフレーク以外の穀物ベース朝食製品が含まれます。
シリアルを発明したのは、設立者の兄
発明したのはジョン・ハーヴェイ・ケロッグ(John Harvey Kellogg)さんで、ケロッグの共同設立者にして、初代社長の兄です。
米国の菜食主義教団信者で、医学博士でした。
シリアルとグラノーラは違う食品
グラノーラは、あらびきの小麦粉が主な材料です。
対してコーンフレークはオート麦・小麦・トウモロコシ粉が主な材料です。
製品パッケージに初めて成分を表示した企業
ケロッグは製品パッケージに栄養表示を記載するアイディアを採用した初めての企業です。(Kellogg press kits "Food Industry Firsts" より)
パッケージへの取り組みとしては他に、エネルギー使用・資源使用・温室効果ガス排出を削減する取り組みの一環として、2016年に梱包材の総重量を約38%削減したそうです。
植物由来食品ブランド「モーニング・スター・ファーム」
コーンフレーク以外にも多数のブランドを所有するケロッグですが、そのなかには植物由来食品のブランドが含まれています。
そのブランドが、「モーニング・スター・ファーム(Mornihg Star FARMS)」です。
40年以上にわたり植物由来の食品を研究しているそうです。
MorningStar Farms is plant-based goodness made for everyone.
Mornihg Star FARMS WEBページより
”モーニング・スター・ファームは全ての人々のために作られた最善の植物由来食品です。”
ケロッグの植物由来肉「インコグミート」はこのブランドから発売されています。
植物由来肉の商品名は「インコグミート」
商品名はIncogmeato(インコグミート)。
ビヨンドミートやインポッシブルフーズに並ぶ、不思議なノリの名前です。
これは想像ですが、"Incogmeato"のネーミングは、イタリア語が語源の英単語"incognito"からの造語だと思います。
incog-ni-toのtiをmeaに入れ替えてあるのではないでしょうか。"Incogmeato"の意味は【素性を隠して、匿名で、お忍びで】です。
ビーガンへの完全対応
モーニング・スター・ファームは、2018年から非GMO大豆たんぱく質と、天然由来の食品添加物のみを使用した食品の販売を開始しました。
インコグミートもそこに含まれる製品で、完全に植物由来の材料のみで作られた、100%ビーガンの要求に対応できる食品です。
もちろん、乳製品や卵も含まれません。
なお、グルテンフリーではありません。
遺伝子組み換えではない植物由来肉
インコグミートは非GMO(遺伝子組み換えでない)大豆主体です。
非GMO(non-GMO/GMO Free)
GMO は Genetically modified organism の略語で遺伝子組換え生物の意味。Genetically【遺伝的に】、modified【修正】、organism【生物の】。非やnonが付くことで否定、つまり、遺伝子組み換えではないことを表します
植物由来肉の主な競合製品では、ビヨンドミートは非GMO、インポッシブルフーズはGMOです。クリーンミート(培養肉)もGMOです。
動物由来肉が地球環境にあたえる影響
植物由来肉ブランドのページに必ずといって良いほど掲載されているのが、地球環境にあたえる影響がいかに少ないかというPRです。
モーニング・スター・ファームのWEBページも例にたがわず、動物由来肉を植物由来肉に変えると地球環境にあたえる影響の変化の計算機 『CALCULATOR + COMPARISON FACTS』 が掲載されています。
たとえば……
- 1週間21食のうち、3食を動物由来肉から植物由来肉へ変える
- 自分と、その友人4人が実行する
- この条件を1年間つづける
この条件で計算すると、次のような結果になりました。
- 約20,441リットルの水が節約
(アメリカ人が1日に使用する水の309倍) - 車が約2,000km走ったと同じ量の温室効果ガスの削減
(国際宇宙ステーションへ11回旅行するのと同じ距離) - 約1394平方メートルの土地使用面積の削減
(テニスコート5面分以上)
とても面白いので、みなさんも、ぜひ試してみてください。
植物由来肉の市場規模
地球上の人口は増加の一途をたどり、2020年の推定約77億人から、2050年には約97億人になると考えられています。
そして、増加した人口を支えるだけのタンパク質供給量を、動物由来肉だけでまかなうことは不可能だと考えられています。
そのため、現在の食肉需要と増加する需要、そのうちの何割かを代替のタンパク質源である植物由来肉などに頼らざる負えない状況にあります。
一説では、2040年には食肉市場の60%を代替肉が占めるとの予測があります。
2018年の全世界食肉生産量は3億トン以上ります。そのうち60%となれば超巨大市場が誕生することになります。
パティとハンバーグは違うもの
植物肉関連企業の主力商品の多くがハンバーガー用「パティ」です。
米国のスーパーマーケットでは一般的な商品ですが、日本のスーパーマーケットでパティはあまり目にすることがありません。
そのため、料理をしない方は「ハンバーグ」とおなじものと思うかもしれません。
ハンバーグとパティの違いが分かりやすいように、簡単な比較表をつくりました。
ハンバーグ | パティ | |
---|---|---|
材料 | 牛と豚の合い挽き | 牛肉100% |
調理方法 | 練る | 練らない プレスする |
肉以外の材料 | 塩 コショウ パン粉 サラダ油 牛乳 卵 玉ねぎ | 塩 コショウ |
インコグミートのテスト販売は高評価
2019年10月に米フェニックスで インコグミートソーセージのテストを行ったそうです。ガーデンスペシャルティピザの商品名で$10販売されたようです。
地域が限定的なのでレビューは少ないですが、概ね高評のようです。(ピザより、同時にテストされた丸型パッケージへの注目度が高かったようですが)
競合企業
競合企業の筆頭は、ビヨンドミートとインポッシブルミートです。その2社に加え、多数の企業をまとめた記事を書いていますので、ぜひ参考にしてください。
みのたけの感想
調べてみたら、本業をおろそかにしていない、すばらしい企業でした。株価も長期運用なら申し分ないように見えます。
懸念点としては、コーンフレークの売り上げがこのところ低下傾向にあること。欧米若年層のシリアル離れが進んでいるという記事を見かけましたが、そのあたりが今後を左右するかもしれません。
植物肉関係がもう一本の柱になれば、より魅力的な投資対象になりそうですが、いまのところ大きな動きはないようにも感じられます。
ケロッグのこれまでの販売経路を考えると、おもにスーパーマーケットでの展開になるため、コラボレーションなどでの派手な動きが目につかないだけかもしれません。
今後の動き次第では、株価が下がったタイミングでエントリーしたい銘柄だと思いました。
ご愛読ありがとうございます!