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NVIDIA株に3回発生した株価の転換点、その理由を徹底解説【米国株】

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NVIDIA Corporation /NASDAQ:NVDA

NVIDIAの株価には顕著な3回の転換点があります。

  • 【転換点1】ゲーム特需
  • 【転換点2】暗号通貨の暴落と米中関係悪化の影響
  • 【転換点3】新製品のヒット

この記事では、これらの転換点について徹底的に解説します。

【転換点1】2016年からの上昇

NVIDIA社製品Geforce RTX2080 Tiファウンダーエディションのパッケージ開封画像
NVIDIA社製チップを搭載したグラッフィクカード

2016年頃から、PCオンライン対戦ゲームのブームが急速に拡大します。

それ以前は、ハードウェアの制約によりオンラインゲームはオフラインゲームより品質が劣る部分が多いものでした。

しかし、インターネット環境が世界中で整ったこと、普及価格帯のPCの性能が急速に向上したことなどを理由に、PCオンライン対戦ゲームの品質が一気に高まり始めます。

そして、それまで低迷していたデスクトップPCの需要が、PCオンライン対戦ゲームの流行拡大とともに急激に伸び始めました。

特にゲーミングPCと呼ばれるPCゲーム専用パソコンは、PCとしては高額商品にも関わらずの販売台数を急激に伸ばしました。

水冷フルタワーのゲーミングPCの参考商品画像
ゲーミングPC/©Jjulienava CC BY-SA 4.0

PCオンライン対戦ゲームは、PC処理の遅延が対戦結果に如実に影響します。そのため、求められるパソコンの性能が年々高まります。

特にゲームに影響を及ぼすPC部品は、GPUと呼ばれる画像処理に特化したプロセッサでした。そのため、ブームの拡大と共にGPUの需要が高まります。

そして、2016年時点のPCゲーム用GPUにおけるシェアが過半数を超えていたNVIDIAの売り上げは急激にのび、株価も上昇を続けました。

GPU
Graphics Processing Unit の頭文字を取った略語。グラフィック・プロセッサ・ユニットは、PCの画像処理専用の半導体チップのこと。このチップを組み込んだPC用グラフィックカードは、ゲーム・3DCG・動画編集などの高度な画像処理に必須です

この時市場をけん引した主なオンライン対戦ゲームには、「League of Legends」「DOTA2」「Call of Duty」「CS:GO」などがあります。

【転換点2】2018年10月からの下落

暴落の理由は複合的ですが、主に3つの要因が考えられます。

  • マイニング需要の終焉
  • 米中関係の悪化による投資家心理の冷えこみ
  • ゲーム市場規模の大きい中国の景気悪化

これらの要因から、2019年第一四半期営業利益は前年同期比-72%と大きく下げることとなります。

マイニング需要の終焉

2017年頃から、ビットコインに代表される暗号通貨の「マイニング」がブームとなりました。

マイニングとは、通貨管理業務にリソースを提供することで、その見返りとして暗号通貨が支払われる仕組みです。

最初は主に個人のPCを用いてマイニングは行われていました。しかし、利益が出ることが判ると、電気料金が安い地域にマイニング工場を作り、組織的に大量のマイニング設備を稼働させる業者が世界各地に現れるようになります。

マイニング施設/Marco Krohn: CC BY-SA 4.0

マイニングでは、利益効率を上げるために高性能グラフィック処理ユニットが必要になります。その用途に合致したNVIDIA製品に大規模特需が発生しました。

NVIDIA製品を使用したマイニングが他社GPU使用時と比較して利益効率が高いことが知れ渡ると、在庫は急激に消費されます。そして市場に流通する製品が不足、価格が高騰します。

しかし、2018年、早くも暗号通貨の価格は急落します。

暗号通貨の一つビットコインを例にとると、2017年12月17日の19,666.00米ドルをピークに、2018年12月15日には3122.28米ドルまで下落しました。363日で約84%の下落です。

仮装通貨Bitcoin対米ドルの、2017年から2020年間の週足ロウソク足チャート。
Bitcoin/米ドル(週足):2017年~2020年

通貨価格が下落すると、マイニング設備費用と稼働電機代金が収益を圧迫し、利益でなくなります。

そして、マイニングブームは一気に沈静化、需要は一気にしぼみます。

また同じ時期、マイニング専用に特定用途向け集積回路を開発する企業も現れるようになります。

そのような企業の製品は、NVIDIA製品よりマイニング性能が高く、費用効率も良いものでした。

そのため、NVIDIA製品を使用するメリットが失われ、マイニング需要はさらに減少します。

さらに悪いことに、マイニングの需要が減少したのち、高騰した製品価格が適正に戻るのには長い時間が必要でした。

製品価格の高騰でゲーム需要が減少

マイニングブームでGPU価格が高騰したことは、売り上げの大きな割合を占めるゲーム用途の需要に悪影響を与えていました。

高騰した価格はゲームで使用するには見合わず、ゲーム需要は冷え込んでいたのです。

NVIDIAの2019年第1四半期の部門別売上高は以下のようになっています。

  • ゲーム …… 10.5億ドル
  • データーセンター …… 6.3億ドル
  • 業務用CG …… 2.6億ドル
  • 自動運転 …… 1.7億ドル

マイニング需要が減少したところへ、本来の用途となるゲーム用ハイエンドPCの需要が冷込んだことが、売上減少へさらなる追い打ちをかけます。

しかし、これだけでは終わりません、米中関係の悪化がNVIDIAにさらなる悪影響を及ぼします。

NYダウ・上海総合指数・NVIDIA株の比較

2016年から2020年の、ダウ工業30種株価指数と上海総合指数とNVIDIAの複合ロウソク足チャート
ダウ工業30種株価指数と上海総合指数とNVIDIAの複合チャート(週足):2016年から2020年

このチャートは、米国のNYダウ(みず色)・中国の上海総合指数(黄色)・NVIDIA株価を合成しています。

そのため、転換タイミングの一致・不一致が一目で比較できます。

【注意】単位が異なるので、振幅の大きさは比較できません

NYダウとNVIDIAの株価は、下落のピークとボトムが完全に一致しています。

このことから、米国市場全体が下落した影響でNVIDIAの株価も下落したということが判ります。

では、なぜ下落したのでしょうか?

米中関係の悪化による投資家心理の冷えこみ

NVIDIA社製のGPUダイ
NVIDIAの最新GPUユニットに搭載された半導体チップにはTAIWANの文字が見える

ここまでの上昇をサポートしたトレンドラインを割り込んだのが、2018年10月10日。この日、中国がウイグル族の事実上強制収容となる施設を法的に認めています。

これは、米国の中国批判に対する対抗措置と考えられています。それに対し、米国は制裁として中国企業に対する禁輸措置を発表します。

この米中関係悪化を予想させる出来事が、投資家の心理に悪影響を与えたことが、株価が暴落するきっかけになったと考えれれています。

先のチャートで上海総合指数(黄色)は、NYダウ(みず色)より早いタイミングで下落に転じています。なお、この時期のアジア市場は軒並み下落しています。

チャートからはNVIDIAの株価との連動は見られません。

しかし、アジア経済の停滞は、NVIDIAに多大な影響をあたえる事となります。

VIXショックでアジア経済が停滞

2018年初頭におきた上海総合指数の下落は「VIXショック」と呼ばれています。

米国経済が好調なためFRBの利上げが速まるとの観測からVIX指数が大幅下落、その影響がアジア市場下落のきっかけになったと言われています。

VIX指数(日足):2018年1月~3月

下落が始まったのは2018年1月30日。この日の主な出来事は、米国のGDP速報値発表です。さらに下げ幅が大きいのが2月7日~2月8日。VIX指数のピークは2月6日です。

ゲーム市場規模が世界2位の中国の景気悪化

マーケティング会社newzooの2019年調査によると、ゲーム市場の国別規模上位3位は以下のようになります。

  • 1位 …… 中国/36,5億ドル
  • 2位…… 米国/35,5億ドル
  • 3位…… 日本/18,6億ドル

4位の韓国の市場規模は日本の半分以下、それ以降、ドイツ、イギリスと続きますがさらに小さな市場となります。 このことから、中国市場がNVIDIAにとって重要な事がわかります。

マイニング特需が失われ、価格の高騰にも苦しむNVIDIAに、中国の景気悪化による需要減少はさらなる困難を招きました。

その結果は決算にはっきりと表れることとなり、NVIDIAの株は急激に売られるようになります。

【転換点3】2019年の急上昇

2018年8月13日、史上初のレイトレーシングGPU「Quadro RTX」を発表。

この発表以降、次々に発売される第8世代GPU搭載製品が投資家の好感を得ます。これが、株価上昇の理由です。

新製品の核心となる技術はチューリング(Turing)GPU とリアルタイム・レイトレーシング・テクノロジー(real-time ray tracing technology)です。

Turingは、それまでの製品となにが違うのか

技術面での大幅アップグレード

  • 製造プロセスが16nmから12nmへと微細化
  • CUDA(並列処理支援ユニット)数が従来の1.2倍
  • メモリ転送速度14Gbpsの規格GDDR6への対応
  • 複数GPUをリンクさせる接続端子に従来比較速度50倍のNVLinkを採用
  • VRヘッドセット用USB Type-C端子の搭載
  • 従来比10倍のレイトレーシング性能となるRTコア実装
  • 従来比4倍のディープラーニング性能となるTensorコア実装

専用チップによる処理時間短縮がすべてに好影響をあたえる

Turing は、人類史の最大の技術進歩である人工知能 (AI) をコンピューター グラフィックスに活用します。AI コンピューティングの威力をもたらす Tensor コアを搭載した Turing GPU は、強力な AI アルゴリズムをリアルタイムで実行して、はっきりとした鮮明かつリアルな画像を構築し、今までは不可能だった特殊効果を適用できます。

NVIDIA社WEBページ

レイ トレーシングは、現実のような光源、反射、影のための決定的なソリューションで、従来のレンダリング技術ではなしえなかったリアルな描写が実現します。Turing はリアルタイム レイ トレーシングに対応した初の GPU です。

NVIDIA社WEBページ

このテクノロジーは映画やゲームの製作において費用の大半を占める、撮影後の仕上げ作業時間を短縮することができる技術です。

そのため、主にアーティストやデザイナーに歓迎されました。

またこのころから、データサイエンティストが深層学習などの用途で大量のデータに高度な処理を施すために、個人環境でワークステーションの制作をする動きが目立ち始めます。そのような要望にも、Turing GPU は高い性能を発揮します。

Turingアーキテクチャ採用製品

これは一般消費者向け製品のラインナップになります。

  • GeForce RTX 2080 Ti(販売価格1,199米ドル)
  • GeForce RTX 2080 SUPER
  • GeForce RTX 2080
  • GeForce RTX 2070 SUPER
  • GeForce RTX 2070
  • GeForce RTX 2060 SUPER
  • GeForce RTX 2060
  • GeForce GTX 1660 Ti
  • GTX 1660 SUPER
  • GeForce GTX 1660
  • GTX 1650 SUPER(販売価格229米ドル)
  • GeForce GTX 1650

上に位置する製品が、より高性能な製品です。

全ての製品でできることは同じですが、高価な商品ほど速度が早くなり、作業を短時間で追えることができます。

性能測定ソフトの計測スコアの差は約3.5倍。価格差は上位機種と下位機種で約5.2倍になります

ライバル企業AMDの新製品を牽制するため”GeForce GTX 1660 Super”を投入

NVIDIAは熟考された、製品ラインナップと投入時期コントロールでも知られています。

”GeForce GTX 1660 Super”の投入はそのことを象徴する出来事として知られています。

NVIDIAは、ライバルのAMDが新製品を発表すると、その直後に自社製品ラインナップの隙間を埋める製品を突如発表します。

発表された製品は、性能面ではラインナップ拡充の必然性があまり感じられないものでした。しかし、市場の需要が最も高い価格帯の製品です。

  • 2019年10月7日
    ライバル企業AMDが”Radeon RX 5500”シリーズを2019年内発売と発表
  • 2019年10月29日
    それを受け、NVIDIAは”GeForce GTX 1660 SUPER”と”GeForce GTX 1650 SUPER”の投入を発表
    同日”GeForce GTX 1650 SUPER”を希望小売価格229ドルで販売開始
  • 2019年12月12日
    AMDが”Radeon RX 5500”シリーズの製品第一弾”Radeon RX 5500 XT”を販売開始

NVIDIAが最も得意とする高価格帯製品は1,199米ドルと高価なため、購入者の数の最も多い一般ゲームユーザーには非現実的な価格帯です。

それに比べ、2019年10月29日に発表した製品は、その時点で発売されているゲームに必要最低限レベルへ性能おさえることで、3万円前後に価格をおさえています。

従来、この価格帯はAMDが強いとされていました。

NIDIAがAMDより先に市場に製品を投入することによって。AMDのシェアを大きく抑える結果となったと言われています。

NVIDIAは米国市場へ上場する企業です

エヌビディア(NVIDIA Corporation/NASDAQ:NVDA) は、1993年に米国カリフォルニア州で設立しました。

1999年にNASDAQに1株12ドルで上場しました。

※ブログ記載内容は、投資の推奨または勧誘を目的としたものではありません。※正確な情報をお伝えるるよう心がけていますが、記載内容を当ブログが保証するものではありません、取引の際は、必ずご自身で取引内容を確認し、投資にあたっての最終判断はご自身でお願いします

企業の目的

グラフィック処理ユニット (GPU)を1999年に発明し、その研究、開発、製造を主な業務としています。

GPUは、PCゲーム、ディープラーニング、自律ロボット、自動運転、画像解析などの用途に使用されます。

他社への技術協力によるネットワークの構築に積極的なのも同社の特徴です。

2005年にはSONYのゲーム機「PLAYSTATION 3」のGPU開発にNVIDIAが携わり、2016年には「Nintendo Switch」へ専用にカスタマイズされたTegraプロセッサーが採用されました。

任天堂のCSRリポートには開発パートナーとしてNVIDIAが紹介されています。

みのたけの感想

自動運転や自律ロボットなどは、技術的転換点が訪れると一気に株価が動く可能性も十分に考えられます。IT関連企業は、動き出してからが早く、買い場を逃すこともありますので、タイミングが難しいと改めて感じました。

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