コロナ・ショックで株価が暴落する最中、「日本銀行の国債買い現先オペレーションで札割れ」というニュース報道がありました。
オペの結果は、応札額が5億円にとどまる大幅な札割れになった。
Bloomberg L.P. WEBページ/2020年3月13日記事より
こんな感じです。
ちょっと分かりにくいと思ったので、【国債現先オペ】【札割れ】について解説します。
目次
国債現先オペとは?
※ブログ記載内容は、投資の推奨または勧誘を目的としたものではありません。※正確な情報をお伝えるるよう心がけていますが、記載内容を当ブログが保証するものではありません、取引の際は、必ずご 自身で取引内容を確認し、投資にあたっての最終判断はご自身でお願いします。
なんと! 国債現先オペの取引ルールが日本銀行WEBページにありました!
国債を売戻し(買戻し)条件を付して入札によって買入れる(売却する)資金供給(吸収)オペレーション。
日本銀行WEBページ
金融機関しか参加できない入札なのに、取引ルールを誰でも確認することができます。日本銀行間の透明性は素晴らしい!
ただし、札割れの解説はありません。この記事では、国債現先オペのあとに、札割れを解説します。
「オペ」とは、オペレーション(公開市場操作)
オペレーション = 公開市場操作
上の2つは同じ意味で、市場景気向上や物価安定を目的に日本銀行が実施します。実際におこなうことは、金融機関と日本銀行が国債や現金を等価で交換する、もしくは金融機関への貸付けなどです。
この記事では、おもに国債を売買するオペレーションについて解説します。
日本銀行(Bank of Japan)
日本の中央銀行の名称です。正式な読みは「にっぽんぎんこう」、略称は日銀「にちぎん」です。
日本銀行券(現金)発行や金融政策の実施などをおこないます。株式会社とちがい、日本銀行の出資者には経営関与や役員選任の権利はありません。日本政府は資本金の55%を出資しています。出資証券はJASDAQ:8301
中央銀行(Central bank)
中央銀行=日本銀行(日本の場合)
国家の金融システム中核となる機関です。政府から独立し、金融機関と取引します。主な業務は、通貨発行、金融機関の預入れ管理、貸出です。日本の日本銀行、米国のFRBなど。
オペレーションは、売りと買いの2種類
- 国債を売る
→ 国債売り現先オペ(買戻条件付売却) - 国債を買う
→ 国債買い現先オペ(国債の売戻条件付買入)
以下はすべて【1. 国債売り現先オペ】【2. 国債買い現先オペ】で説明します。
もうすこし丁寧に書くと、こうなります。
- 日本銀行が国債を【売って】、金融機関が現金を【支払う】
- 日本銀行が国債を【買って】、金融機関に現金を【支払う】
現金の発行はおこないません
取引に使う現金には、2種類あります。
- 金融機関が支払う現金
→ 日本銀行口座の残高から支払う - 日本銀行が支払う現金
→ 発行済み紙幣から支払う。
オペレーションで、紙幣(日本銀行券)の発行はおこなわれません。
反対取引の条件付き
- 国債売り現先オペ
→ 売却日翌日から6カ月以内に買戻し - 国債買い現先オペ
→ 買入翌日から1年以内に売戻し
国債現先オペには、このような条件があります。
入札で割当が決まる
入札するか金融機関が決定します。利回りと取引量を書いての入札です。そして、日本銀行に都合がよい利回りで入札した順番に、希望の取引量が割当られます。
国債現先オペをより詳しく知りたいときは、日本銀行WEBページを確認しましょう。
「札割れ」とは、予想したほど需要がないこと
札割れとは、募集に対して入札が少なかったことを表します。
金融機関の判断で自由に入札するので、日本銀行が考えていた取引量の入札がない場合も当然あります。その状態を札割れといいます。
予測が外れることなので、とくに珍しい事ではありません。
ただし、札割れが繰返しおこるのは問題です。日本銀行が市場を適正な状態に操作ができない、制御不能の状態になりつつあると市場は捉えます。
英語で書くとこのようになります。
undersubscribed【意味:札割れ】、national debt【意味:国債】
札割れには2種類
オペ―レーションに2種類あることを解説しました。それぞれに札割れの可能性があります
オペレーション | 市場 | → | 考えられること | |
---|---|---|---|---|
1. | 国債売り現先オペ | 現金減 | 札割れ | 金利低下・景気が過度に過熱 |
2. | 国債買い現先オペ | 現金増 | 札割れ | 現金が足りている・市場が安定している |
国債【売り】現先オペ
国債売り現先オペは、金融機関の現金が減るオペレーションです。
そのため、金融機関に現金が余っているときに実施されます。
特殊な例として、金融機関の国債不足を補う目的で、年度末に実施されることがあります。この場合、実施することに問題はありません
国債売り現先オペは金利上昇を招く
つまり、国債売り現先オペは、過度な景気の過熱(例えばバブル経済の発生など)を抑制するためにおこなうのが一般的です。
オペレーションで市場に流通する国債の量が減ると、金利が上がります。すると企業などは借入に慎重になり、経済の停滞を招きます。
札割れは金融機関の現金に余裕がないということ
札割れがおきたということは、金融機関が、「国債を入手する意味がない」もしくは「現金を手放したくない」と考えているということです。
金利が高いときに、国債売り現先オペが札割れしたら、国債の信頼が失われている可能性があります。これは大問題です。利息未払・満期未償還・値下がりなど、発行者である国の信頼が揺らいでいると考えられるからです。新興国の国債には、このような状態のものがあります。
それ以外の場合は、すぐに影響が出るような問題はありません。
EMEは、エマージング通貨・新興国通貨のことです【為替】【新興国】
国債【買い】現先オペ
国債買い現先オペは、金融機関の現金が増えるオペレーションです。
そのため、金融機関の現金が不足するときに実施されます。
国債買い現先オペは金利低下を招く
つまり、国債買い現先オペは、景気が冷え込んでいるときに向上させる目的でおこなうのが一般的です。
オペレーションで市場に流通する現金の量が増えると、金利が下がります。金利が低下したことで企業などは借入をしやすくなり、景気が向上します。
札割れは金融機関の現金に余裕があるということ
札割れがおきたということは、金融機関が、「追加の現金は必要がない」、もしくは「国債を手放したくない」と考えているということです。
このときの札割れは、市場が安定して運用されていることの現れです。日本銀行が想定するより、金融機関や市場が安定していることを表します。
国債を手放したくないという事は、持っている価値がある、つまり信頼できるととらえることができます。
みのたけの感想
札割れをどうとらえるかは、非常に複雑です。今回は、一般的な状況だけを解説していますが、周辺状況しだいでは、異なる捉え方ができるケースは少なくありません。
報道では、「日本銀行が方針を表明する為」といったニュアンスの表現も見受けます。想像の域を出ない判断な気がもしますが、どうなのでしょう。
今回の記事でキーポイントとなる国債について、「みのたけ」が買った本の中から一冊ご紹介します。なぜこの本を紹介するかというと、お買い得だから(笑)
記事執筆時点で中古が1円+配送料で購入できます。
国債については、もうすこし勉強したら記事にします。
ご愛読ありがとうございます!