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ブラックマンデー発生、そのとき株価はこう動いた【過去チャート】

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1987年10月19日、市場構造の欠陥がいくつも重なり世界同時株安がおこりました。

他の暴落もそうですが、原因には様々な意見があり、特定されていません。

この記事は、「みのたけ」がいちばんシックリきている、米国連邦準備制度(FRS)の考察を参考に解説を書きます。ご存知の内容と異なるかもしれませんので、違いを楽しんでもらえると嬉しいです。

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ブラック・マンデーとは、1987年10月19日におきた株の暴落のこと

香港、英国、米国の順に、次々と株価が暴落しました。

ブラック・マンデー(Black Monday)の下落で特徴的なのは、初速の速さです。3日間で底が見えています。

取引所 下落率 高値 安値 単位
香港-38.8%3,665.72,241.7香港ドル
NYダウ-25.3%2,164.21,616.2米ドル
S&P500-23.4%282.7216.5米ドル
日経平均-16.9%26,35721,910

参考に(日の区切り方が意図的ですが)暴落日の19日~市場翌営業日の20日までどのくらい下落したかを計算しました。ただし、香港市場だけは4日間閉鎖されたため再開日の26日で計算しています。

※ブログ記載内容は、投資の推奨または勧誘を目的としたものではありません。※正確な情報をお伝えるるよう心がけていますが、記載内容を当ブログが保証するものではありません、取引の際は、必ずご 自身で取引内容を確認し、投資にあたっての最終判断はご自身でお願いします。

香港・英・米・日本の株価指数チャート

まずチャート見てもらった方が解りやすいと思います。

4か国のチャートと、米ドル円レートのチャートを連続でお見します。

香港→英国→米国、の順番に下落したと言われているので、チャートはその順番に並べています。5点のチャートすべて同期間の日足です。

香港ハンセン株価指数HSI(日足):1987年9月~1987年12月
英国/FEST100指数(日足):1987年9月~1987年12月
米国/ダウ工業株30種(日足):1987年9月~1987年12月
日経平均株価(日足):1987年9月~1987年12月
米ドル円為替レート:1987年9月~1987年12月
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香港ハンセン株価指数(HSI)
ハンセン指数サービスが香港証券取引所上場銘柄の株価をもとに算出する時価総額加重平均型株価指数です。中国を代表する指数はほかに、上海総合株価指数、中国企業指数、レッドチップ指数などがあります

FTSE100指数
ロンドン証券取引所に上場する100社の株価をもとにした時価総額加重型指数です。ロンドン券取引所と英国フィナンシャルタイムの合弁会社が公表しています。英国を代表的する指数です

ダウ工業株30種平均(Dow Jones Industrial Average)
S&P Dow Jones Indices が算出する、ニューヨース証券取引所とナスダックの上場銘柄30社の株価を基準にした指数です。米国を代表する指数です

日経平均株価(NIKKEI225)
日本経済新聞社が算出する、東京証券取引所第一部上場銘柄225社の株価を基準にした指数です。日本を代表する指数です

複数の要因が絡み合って暴落

なぜ起きたかは不明です。しかし、世界中の経済学者が指摘するいくつかの可能性が存在します。

その一つが、プログラム取引がつくりだす下落相場です。

ただ、これはリスク回避を主眼において取引するため、発生する下落はさほど大きくないと試算されています。

しかし、その下落が、きっかけをつくったと多くの人々が考えています。

NYダウ中期間チャート

米国/ダウ工業株30種(日足):1981年頃~1993年頃

チャート内の青札がブラックマンデーがおきた日です。

もう一つに社会不安があります。1987年頃の米国は株価の上昇が続いていました。しかし、貿易赤字、ドル高、地政学的リスクなど不安が渦巻き、社会情勢が不安定な時期でした。

そのような社会不安とプログラム取引がおこした下落に、人々は不安に襲われ売りが殺到したという仮説があります。

不安を増長させた6日間

この数日間に偶然、イベントが重なりました。(リンクは記事内の用語解説です)

1987年10月14日水曜
証券取引委員会の買収防止法導入と、貿易赤字拡大の報道。情勢不安から株価が下落(NYダウ-2.4%/下落の起点日)

1987年10月15日木曜
市場終了30分前からポートフォリオインシュアランス関連とみられる大量の売りが発生。米タンカーがイラン海軍から攻撃を受けミサイル被弾、米国は報復措置として石油プラットフォームを爆撃、原油市場の不安が高まる(NYダウ-2.4%)

1987年10月16日金曜
トリプルウィッチングによりデリバティブ期限切れ。よく週明けにポジションを建てる流れが発生し、多くが下落を予測して先物取引をおこなう。売ポジションが急激に膨らむ(NYダウ-4.3%)

1987年10月17日土曜
市場休業日。財務長官が貿易赤字縮小のために米ドル切下げとの発言。不安が増長される

1987年10月18日日曜
市場休業日(週明け、開始直後に売ろうと多くの人々が考えたと言われています)

1987年10月19日月曜
ブラック・マンデー。開始直後、現物取引は停止するも、先物市場で大量売り(NYダウ-14.8%)

プログラム取引が原因か?

1976年からニューヨーク証券取引所ではコンピュータシステムで売買注文ができるDOTシステム(Designated Order Turnaround system)が稼働します。

そして1984年には、取引スピードが2倍にアップグレードしたSuper DOTシステムが導入されます。暴落当時は、全取引の90%がこのシステムを通して行われていました。

このシステムを駆使した2つのデリバティブ取引が問題の引き金になったと考えられています。

  1. ポートフォリオ・インシュアランス
  2. インデックスアービトラージ

暴落が発生した19日は、自動取引から1秒間に何度も行使される大量の注文によりシステムが早々に停止しました。

しかし、相場の下落を見た市場関係者から売りが殺到します。売りが殺到し買いが出ない状況になると、買いが出るまで値は下がり続けます。このような人々のの行動が大規模な下落相場をひきおこしたと考えられています。

システムが停止したことで、19日の大部分の取引は、旧来の電話取引でおこなわれたそうです。

デリバティブとは金融派生商品のこと

株式、債券、為替、燃料、貴金属、農産物などの取引価格から【導きだされる】論理価格で取引する商品です。オプション取引、先物取引、スワップ取引が主な取引になります。

英語表記は derivative で、derive【意味:導きだされる。派生する。由来する】が由来です。

ポートフォリオ・インシュアランス

自動取引を駆使し積極的にデリバティブ取引をおこない、下落局面で株式を売却せずに損失を最小にとどめる取引のことです。

1976年にMark RubinsteinさんとHayne Lelandさんによって開発され、この手法を取り入れた金融商品「ポートフォリオインシュアランス(Portfolio Insurance)」が当時大流行していました。

オプション取引:事前に決められた権利行使価格で満期日までに売買する権利を売買する取引。価格が下落すると予測した場合はあらかじめ決めた価格で売る権利の「プットオプション」を買います

この自動取引では、早い段階にプットオプション取引をすることで、リスクを最小におさえます。リスクを最小にとどめることを主眼におくため、上昇局面と下落局面の売買量のバランスは均等ではなく、下落局面で大量の取引が必要になります。

a new product from US investment firms, known as “portfolio insurance,” had become very popular. It included extensive use of options and derivatives and accelerated the crash’s pace as initial losses led to further rounds of selling.

FederalReserveHistory.org/"Federal Reserve History."/October 1987より

”「ポートフォリオ・インシュアランス」と呼ばれる米投資会社の新商品が大変な人気でした。その商品はオプションとデリバティブの広範囲な使用を含み、最初の損失が、さらなる売につながり暴落が加速しました。”

連邦準備制度(Federal Reserve System:FRS):アメリカの中央銀行制度。米国ワシントンD.C.の連邦準備理事会(FRB: Federal Reserve Board)と主要都市の連邦準備銀行(Federal Reserve Bank, FRB)で構成される

インデックスアービトラージ

アービトラージ取引は、2つの市場に生じる価格差を利用する取引です。安い市場で買い、高い市場で売ります。そして2つの価格が近づいたら反対売買し利益を確定します。非常に専門性の高い取引とされています。

インデックスアービトラージ(Index Arbitrage)は、現物市場と先物市場でおこなうアービトラージ取引です。日本では指数裁定取引と呼ばれています。現物株ETFなどと株価指数先物を組み合わせます。

先物取引:満期日に事前に決められた価格で売買する取引

トリプルウィッチング

年4回訪れる取引量が増加する日をトリプルウィッチング(Triple Witching)と呼びます。トリプルウィッチングの意味は「3人の魔女」です。

3月、6月、9月、12月の第3金曜日の午後の4回、この日、ストックオプション・株価指数先物・株価指数オプションの契約満了が同日に発生する。2002年からは、同じ日に単一株式先物も契約満了するようになった。

多くのトレーダーがこの金曜にポジションを決済し、翌週明けに新しくポジションを建てることの影響により価格変動率が増加する傾向があると言われます。

しかし、実際のデータでは変動率が少ない日となっています。

迅速な対策で被害は最小におさえられた

問題発生の翌日、1987年10月20日火曜に就任間もないアラン・グリーンスパンFRB議長が金融支援の声明発表します。さらに銀行に通常の条件での貸付けを要請しました。

これ以前の株式市場の暴落では、預金など金融機関へ問題が伝播したのですが、この暴落ではそうなりませんでした。

その後、1989年8月11日にブラックマンデー直近の高値を更新します。

661日、約1年9カ月での戻りです。

4大暴落で元値に戻るまでかかった期間がチャートで一目瞭然になりました

NYダウ長期チャート

ダウ工業株30種(月足):1980年頃~2020年頃

青い札がブラックマンデーの日です。

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ブラックマンデーから米国市場が学んだこと

ブラックマンデーの教訓から、後にニューヨーク証券取引所にサーキットブレーカー(Circuit Breaker)が導入されます。S&P500指数が前日-7%または13%下落すると15分間中断します。20%下落すると、その日の残り取引時間すべて停止になります。

みのたけの感想

もうすこしシンプルなストーリーで解説したかったのですが、長くなってしまいました。長文にお付き合いいただきありがとうございます。

ブラック・マンデーは結局のところ、人々の不安な心理状態が招いた狼狽売りの連鎖かと思います。先進国株は下落相場での焦って売っても良いことがないので、落ち着いて動向を見守るようにしようと、あらためて思いました。リスクを回避して証券取引をたのしみましょう。

ご愛読ありがとうございます!

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