近い将来、世界の全人口に対して必要なタンパク質の量が不足すると考えられています。そして、植物由来タンパク質は、そのタンパク質不足から人類を救う革新的技術と考えられています。
ビヨンド・ミートは、その革新的技術「植物由来タンパク質の製造」におけるトップランナーの1社です。そのため、投資家から高い評価を得ています。
目次
新情報がでるたび乱高下する株価
ビヨンドミートの株価チャート
Beyond Meat, Inc.(NASDAQ: BYND)
ビヨンド・ミート【公式WEBサイト】
- 公募価格: $25.00
- 初値: $46.00(+184%)
- 初日最高値: $72.95(+291.8%)
- 上場来最高値: $239.71(2019年7月26日)
- 上場来最安値: $45.00(2020年3月19日)
- 1株あたり純利益: $-0.29
- 時価総額: $52億5500万(約5654億円)
- 昨年度売上: $2億9789万7千(約320億円)
(2020年4月時点)
株価変動とその理由
2019年5月
Nasdaq(ナスダック)へ上場。株式公開日に+184%まで上昇
2019年6月11日
IPO幹事 JPMorgan Chase & Co. のアナリスト Ken Goldman さんが、同社投資判断を中立に引き下げました。企業価値は2020年推定売上の27倍まで上昇しており価格が高すぎると指摘。この日、株価は前日比20%下落。
2019年7月24日
Dunkin' Brands(ダンキン・ブランズ)がニューヨークのマンハッタンにあるダンキンドーナツ163店舗で、ビヨンド・ミート・ソーセージを使用した朝食メニューの提供。将来、全国へ展開すると発表。株価が上昇
2019年7月26日
最高値となる$239.71まで上昇、公募価格から+958.84%
2019年7月29日
ゴールドマン・サックスやJPモルガンら初期の投資家が半年後まで保有株を売却しないとした同意を撤回したとの報道。発行済み株式の約5%が一度に市場に放出されるため嫌気され暴落
直前におこなわれた決算発表では、第2四半期売上高が前年比約4倍の$6730万と市場予測を上回るも、大量売却のインパクトが勝り大幅下落の引き金に
このタイミングで初期に投資したベンチャー・キャピタルや、同社CEOをはじめとする経営が保有株の一部を売却、利益を確定
この日を境に下降の一途をたどり237日後の2020年3月19日には上場来最安値となる$45まで下落
2019年9月26日
KFC(旧ケンタッキー・フライド・チキン)がビヨンドミートとの提携を発表。アトランタの1店舗で27日より植物由来鶏肉のナゲットと骨なしチキンの無料サンプル提供との報道。株価が上昇
2019年10月28日
IPOのロックアップ期間終了により初期の投資家が利益確定の売りを大量に出したことから下落、窓を開けての開始となる。同時期の第3四半期決算で初の黒字となるが、時間外取引で大幅に下落
2020年1月7日
ライバル企業のインポッシブル・フーズがマクドナルドとの契約を目指さないとのロイターによる報道があったため、ビヨンドミートが契約を目指すとの思惑から買われ急上昇
しかし、その直後にインポッシブル・フーズ広報担当はブルームバーグのインタビューでそれを否定
2020年1月21日
Starbucks Coffee Company.(スターバックス)が朝食メニューの見直しに際し植物由来肉の採用を検討しているとの報道。特定ブランドへの言及がなかったにもかかわらず、株価が上昇
2020年4月20日
Starbucks Coffee Company.(スターバックス)が中国国内の店舗で21日から提供するメニューにビヨンドミート製品を使用するとの報道。株価が上昇
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※ブログ記載内容は、投資の推奨または勧誘を目的としたものではありません※正確な情報をお伝えるるよう心がけていますが、記載内容を当ブログが保証するものではありません、取引の際は、必ずご自身で取引内容を確認し、投資にあたっての最終判断はご自身でお願いします
ビヨンドミート設立からIPOまで
2009年
創業者兼CEOイーサン・ブラウンさんが、カリフォルニアで設立
2013年
全米の WHOLE FOODS MARKET(ホールフーズ・マーケット)でビヨンドミートの販売を開始
資金調達ラウンド
- 2015年10月/シリーズE …… 約1,730万ドル(約18億円)
- 2016年10月/シリーズF…… 約3,010万ドル(約32億円)
- 2017年11月/シリーズG …… 約5,595万ドル(約60億円)
- 2018年10月/シリーズH …… 約5,028万ドル(約54億円)
合衆国証券取引委員会へ2018年11月16日に提出された FORM S-1 REGISTRATION STATEMENTより
Kleiner Perkins(クライナー・パーキンス:米国カリフォルニアのベンチャーキャピタル)、オブビオス・コーポレーション(社名を変更して現在は Twitter, Inc.)、ビル・ゲイツ(マイクロソフト創業者)、レオナルド・ディカプリオ(俳優)、 三井物産などが出資
2018年
新たに二つの生産拠点を建設し生産規模を3倍に拡大
2018年7月
non-GMO認証取得
2019年4月
Tyson Foods, Inc.(タイソン・フーズ)が保有していた6.52%の株すべて売却
2019年5月
Nasdaq(ナスダック)へ上場。
販売株数950万株、公募価格は1株25ドル
世界の食習慣を変えることがミッション
動物由来肉を食べる習慣を、植物由来肉を食べる習慣へ。
その移行を促すことを企業の目的とし、実現のために植物由来肉の研究・製造・流通を手掛けます。
味が美味しいことが最も大切
動物由来肉を食べる量を減らすためには、動物由来肉を食べる機会に、代わりに植物由来肉を食べてもらう必要があります。
たとえば、「牛ステーキを食べようと思ってスーパーマーケットに買い物に行ったはずなのに、植物由来肉を買って帰ってきてしまった」ということが、ごく自然におきる未来をつくりたい、ということ。
そのためには、植物由来肉が、動物由来肉と同じか、それ以上に美味しいものでなくてはならない。そのようにビヨンド・ミートは考えます。
近い将来、世界の人が生きるためのタンパク質が不足する
人間の体を構成する成分は、約60%の水と、約20%のタンパク質、この2つで80%を占めています。
しかし、近い未来に地球の人口は100億人を突破し、動物由来肉だけでは増えた人口を養うだけのタンパク質を供給できないと言われています。
なぜ供給できないのか?
その理由は、主に2点あります。
まず、食肉生産の現場となる畜産は、大量の土地と飼料と水が必要なため物理的限界を迎えるという指摘。
もう一つが、畜産が環境へあたえる影響が甚大なため持続可能性に乏しいとする指摘です。
その、タンパク質の危機を救う方法として、3つの研究がすすめられています。
- 植物由来のタンパク質
- 細胞培養で生産するタンパク質
- 昆虫由来のタンパク質
ビヨンド・ミートは、植物由来肉タンパク質への移行でこの問題を解決できるとしています。
動物由来肉にくらべ温室効果ガス90%削減
それは、土地・飼料・水の使用が大幅に削減でき、環境への負荷も大きく削減することができるということ。
温室効果ガス排出量 | -90% |
エネルギー消費 | -46% |
水不足への影響 | -99% |
土地利用の影響 | -93% |
競合するインポッシブルフーズも同様のアピールをしており、概ね似たような数字となっています。
Beyond Meat, Inc. | Impossible Foods Inc. | |
---|---|---|
温室効果ガス | -90% | -87% |
土地使用量 | -93% | -95% |
水使用量 | -99% | -75% |
※Impossible Foods Inc. のデータはImpossible Foods Inc. のWEBページより引用
2社のデータ算出条件が異なるため、比較はあくまでも参考程度に考えてください。インポッシブルフーズがどのような企業なのかは、『インポッシブルフーズのIPOを期待して事前下調べ』で詳しく解説しています。
生きるために動物を殺さない未来
また、動物福祉環境の改善も企業目的の一つにあげられています。
単純に、動物由来肉の消費が減ることイコール人間の都合で殺される動物が減る、ということ。
動物の命を尊ぶ、そのような意義が、植物由来肉にあるそうです。
植物由来肉のハンバーガーに変な名付けが流行中
ビヨンドミートのハンバーガパティの製品名 "BEYOND BURGER" の "Beyond” は【~を超えて、~の向こうに】という意味。
インポッシブルフーズのハンバーガー "IMPOSSIBLE BURGER" の "IMPOSSIBLE" は【不可能な、ありえない】という意味。
ネスレUSAのハンバーガー "Awesome Burger" の "Awesome" は【最高!、素晴らしい!】という意味のスラング。
ケロッグのハンバーガーパティ "Incogmeato" はおそらく "incognito" からの造語で【素性を隠して、匿名で、お忍びで】という意味。
キラキラネームといっても良いノリです……
植物由来肉は、どんな肉?
肉を構成するのは主に「タンパク質」「脂肪」「ミネラル」「炭水化物」「水」の5つの要素です。
これらすべてを植物性の素材に置き換え、 動物由来肉と同じ見た目になるよう成型した食品が植物由来肉です。
同等の動物由来肉とくらべて、高タンパクで、コレステロール・低飽和脂肪・抗生物質・ホルモンは含まれません。
要冷蔵庫保存、賞味期限は開封後3日以内と、この点も動物由来肉とにています。
なお、これはビヨンドミートの植物由来肉に限る話です。ビヨンド・ミートは、植物性の材料を使い、遺伝子組み換えをしないことにこだわります。
いまのところ販売価格はやや高い
アメリカのスーパーマーケットでは食肉販売コーナーに商品が陳列され、パティ2枚で$5.99程度で販売されてます。動物肉と比べて1.2倍~2倍ほどの商品価格です。
ニューヨークのベアバーガーレストランで販売されている植物由来肉のハンバーガーは$12.95です。
ビヨンド・ミートの商品ラインナップは、ハンバーガーパティ、挽肉、ソーセージ、ミートボール、ナゲットなどがあります。
パティとハンバーグは違うもの
植物肉関連企業の製品の多くがハンバーガー用「パティ」です。
米国のスーパーマーケットでは一般的な商品ですが、日本のスーパーマーケットでパティはあまり目にすることがありません。
そのため、料理をしない方は「ハンバーグ」とおなじものと思うかもしれません。
ハンバーグとパティの違いが分かりやすいように、簡単な比較表をつくりました。
ハンバーグ | パティ | |
---|---|---|
材料 | 牛と豚の合い挽き | 牛肉100% |
調理方法 | 練る | 練らない プレスする |
肉以外の材料 | 塩 コショウ パン粉 サラダ油 牛乳 卵 玉ねぎ | 塩 コショウ |
ちなみに、ハンバーグは日本食です。
海外で "hamburg" と言っても通じないそうです。
ビヨンドミートのつくりかた
タンパク質 | えんどう豆、緑豆、そら豆、玄米 |
脂肪 | ココアバター、ココナッツ油、ひまわり油、キャノーラ油 |
ミネラル | カルシウム、鉄、塩、塩化カリウム |
炭水化物 | ジャガイモ澱粉、メチルセルロース(植物繊維誘導体) |
着色料・調味料 | ビートジュースエキス、リンゴエキス、ナチュラルフレーバー |
これらを混合した後、圧縮、成型を経て完成します。
パスタ製造と同レベルの製造プロセスで、製造は比較的簡単なようです。
霜降り肉の特徴的な白い油模様は ココナッツオイルとココアバターから、肉から染み出す血液はビートで、それぞれ演出しているとのこと。面白いですね。
各社の植物由来肉に違いは?
主原料と製造法(特に遺伝子操作)に違いがあります。
主原料
えんどう豆 | Beyond Meat, Tyson Foods, ConAgra Brands, Nestle |
大豆 | Impossible Foods, Kellogg, 日本ハム, 大塚HD |
味や食感は、各社製品それぞれに、特長(クセ?)があるようです。
えんどう豆タンパク質については、排除するのが非常に困難な独特の風味がわずかに残る、との指摘があります。
植物の味がわずかに残る
One of the biggest downsides of plant based protein is the flavor. Both pea and rice protein have major taste challenges that make formulating a good tasting, clean label product nearly impossible.
MycoTechnology, Inc.,
”植物性プロテインの最大の欠点は味です。エンドウ豆と米のプロテインはどちらも味に大きな問題があり、味の良いクリーンラベルの製品を作ることはほぼ不可能です”
「クリーンラベル」とは食品業界用語で、人口成分や薬品を使わず、消費者が健全な食品として受け止められることを表す言葉です。
タイソンフーズやケロッグなどが出資する、MycoTechnology はその種の問題を、キノコ発酵プロセスで解消する技術の開発に注力しています。
そのようなとき企業の発言なので、先の引用は宣伝意図を含む可能性があります。
しかし、ブログやYoutubeなどで見る事のできる、「食レポ」を注意深く聞くと、若干の違和感を口にする人が少なくないようです。
遺伝子組み換えは必要か?
なお、遺伝子組み換えを利用することで、この問題をほとんど解決できるという意見もあります。
そのためか、遺伝子組換え酵母を使用した素材を使い植物由来肉を製造しているインポッシブルフーズの製品は、食べ比べると最も味が良いとの感想を複数見受けました。
わずかな植物風味の排除が、この分野のシェア争いのキーポイントなる可能性がありそうです。
試食の機会には、植物風味がどこまで排除できているかを意識してみるのも面白いかもしれません。
これまでの成型肉となにが違う?
ビヨンドミートなど今話題の植物由来肉と、過去の類似商品が決定的に異なるのは、味と食感への徹底的なこだわりです。
植物由来肉を普及させるという使命を達成するためには、美味しいという要素が最も重要だと考えて研究されています。
これまでも、ビーガンやベジタリアン向けの商品や、日本や中国で食されてきた通称「肉もどき」など、代替肉は少なからず存在していました。
しかし、それらは肉とはかけ離れたもばかりだったようです。
ブログやYouTubeのビヨンドミート実食レビューでは、植物由来肉を単独で食べると、動物由来肉と間違えかねない、という感想が多数見受けられます。(しかし、食べくらべれば誰でも判る程度でもあるようです)
クリーンミート(培養肉)と植物由来肉は本質から異なります。
植物由来肉は植物由来の原料から製造しますが、培養肉は動物もしくは植物から抽出した細胞を培養して製造します。
『培養肉への投資は将来有望?』で詳しい解説記事を書いていますので、参考にしてください
ビヨンドミートを提供するレストランやファストフードチェーン
Starbucks Corp.
(スターバックス)NASDAQ: SBUX
2020年4月21日から中国の店舗でビヨンド・ミートの製品を使用したメニューを販売します。
McDonald's Corporation
(マクドナルド)NYSE: MCD
2019年9月30日から12週間の期間限定で、 カナダのオンタリオ州でビヨンドミートを使用したハンバーガーの試験販売をおこないました
KFC
(旧ケンタッキー・フライド・チキン)
アトランタの店舗で植物肉ナゲットをテスト。その後、2月3日~2月23日まで、ノースカロライナとテネシーの70店でテスト販売をしました
Tim Hortons
(ティム・ホートンズ)
2019年5月、カナダの2州限定で朝食メニューに植物肉のサンドイッチを試験導入。6月からカナダの4000店に拡大。7月から植物肉ハンバーガーをメニューに追加
9月、植物肉ハンバーガーをメニューから削除、カナダの2つの州を除く全店で植物肉サンドイッチの提供を終了。その後、残る2州も販売終了
親会社の広報担当者は「需要が無かった」と話している
Carl’s Jr.Hardee’s
(カールスジュニア)
2019年10月からのテスト販売を経て、その後は継続して提供。4つのメニューを$3.00~$5.99で販売
Dunkin’ Donuts
(ダンキン・ドーナツ)
2019年7月からのテスト販売を経て、11月から全米約9000店でビヨンドミートを使用したハンバーガーを販売
Subway
(サブウェイ)
2019年9月から635店でビヨンドミートボールを使用したメニューを販売
JAL
(日本航空)TYO: 9201
2020年3月1日から同5月31日の間、ファーストクラスのメニューにビヨンドバーガーを採用
ロサンゼルス~成田のJL61便、~羽田のJL015便、サンフランシスコ~羽田のJL001便で提供
競合企業や関連企業について
植物由来肉、クリーンミート(培養肉)、販売、原材料など、関連する企業をまとめた記事を書いていますので、参考にしてください。
みのたけの感想
スターバックスやマクドナルドがビヨンドミートを採用するのではないか? などの思惑での値動きが続いています。
しかし、ビヨンドミートには、この記事を執筆している時点では、それらの企業に提供するだけの生産力が備わっていない(設備拡大が発表されていますが)と考えられている点を考慮すると、実現は難しいかもしれません。
次々とこの分野に参入してくる大企業は、既存の設備を使って、すぐにでも大量生産ができるとの話もあるようです。そのうえ、植物由来肉の製造が比較的簡単となると、結局のところ資本力の勝負になるかもしれません。
この様な状況の中で、ITではなく、製造流通という大規模設備やインフラが必要な分野で、ベンチャー企業のビヨンドミートがどこまで戦えるのか。その点に注目したいと思います。
思想には、共感できます。
しかし、代替肉の未来は誰にもわかりません。植物由来肉が本当に売れる商品なのか、まったくの不透明です。
消費が伸びず、一過性の流行に終わる可能性も、今の段階では、考える必要がありそうです。
そのように考えると、この分野に投資するなら、次々と参入してくる巨大な資本と設備を持つ国際企業の株を購入し、長い目で見守るのが良いのではないでしょうか。
「みのたけ」は、Tyson Foods, Inc. 株を所有しています。
Nestle が次の購入候補です。
みなさんは、ビヨンドミートの将来性、どのように感じられたでしょうか?
「みのたけ」は、企業WEBページを読み込んで植物由来肉を創るに至った思想にとても共感できましたので、株を購入しました。
このような思想が経済活動として成立するのか?今後もこの業界に注目したいと思います。
ご愛読、ありがとうございます!